源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
新幹線お掃除の天使たち
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新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?

遠藤功【著】
あさ出版刊
2012(平成24)年8月発行

東京駅から新幹線に乗る時、特に指定券が取れずに自由席の乗り場で待つ場合、「早く乗せてくれないかな」と若干苛苛します。列車が到着し、既に乗客が全て降車したといふのに。なぜ待たされるかといふと、掃除をするからですね。
直前まで乗客が利用してゐたのだから、当然いろいろ汚れてゐたり、散かつてゐたりします。専門の清掃ティームが無駄なく動いて、所定の時間内に作業は終了してしまひます。実際はほんの数分待つだけなのに、待つ身としては千秋の想ひなのですね。
「掃除はまあテキトーでいいから、早く乗せてよ」と内心感じてゐたわたくしでした。しかし本書『新幹線お掃除の天使たち―「世界一の現場力」はどう生まれたか?』を拝見した今では、「そんなに慌てなくていいぜ」と心の余裕が出来たものです。

わたくしが居住するのは愛知県なので、実際に乗るのは圧倒的に東海道新幹線が多いのですが、本書で取り上げられてゐるのはJR東グループの「鉄道整備株式会社(通称テッセイ)」であります。現在は社名が「JR東日本テクノハートTESSEI」に変更されてゐるやうで、いづれにせよ通称は「テッセイ」で親しまれてゐます。
東北・上越新幹線の東京駅に上り列車が到着しますと、行儀よく一斉に並んだ清掃スタッフたちがお辞儀をして、乗客が降車するや否やダダーッと車内に乗り込み、手際よく清掃作業をしてくれるのであります。その時間はわづか7分間。その神業のやうな動きぶりに、感嘆の声が出るほどです。かつて様々なメディアでも紹介されたので、ご存知の方も多いでせう。海外からも注目されてゐるとか。

本書の構成は「プロローグ」「第1部」「第2部」の三つのパートに別れてゐます。
「プロローグ」では、「なぜ新幹線の車両清掃会社がこれほど私たちの胸を打つのか?」と題し、テッセイといふ会社の概要を述べてゐます。
「第1部」は、「「新幹線劇場」で本当にあった心温まるストーリー」として、「エンジェル・リポート」なる「清掃現場の良い話」を集めたものから一部を紹介してゐます。トイレ掃除の苦闘や、酔客に襲はれさうになつた話とか。
「第2部」は、テッセイをここまでの組織に変へた矢部輝夫氏、そして柿﨑幸人氏の変革の航跡を辿つてゐます。現場と経営陣の距離感を埋め、環境整備、組織再編に手を付けます。「トータルサービス」の導入や「エンジェル・リポート」の開始......功を急ぎたい心を抑へて、焦らず、時間をかけながら丁寧に改革を進める姿勢は、業界を問はず参考になることでせう。
抵抗や反発を受けながらも、より良い会社を目指す姿勢が支持され、テッセイを「最強のチーム」とまで呼ばしめるまでを時系列で記述してゐます。

「あさ出版」といふことで、ビジネス書のカテゴリーになつてゐますが、全体では「ちよつと素敵な話」を集めた心温まる一冊となつてゐます。硬派のビジネス書を期待すると、いささか美談調の内容に辟易する向きをお有りかもしれません。「世界一の現場力」との評も、褒めすぎとは申しませんが、如何なる根拠によるものか、若干情緒的な部分もあります。他方で、第2部の内容をもう少し突込んでくれたら、といふ気もいたします。
しかし著者の目的は、「キラキラと輝く普通の会社」を一般に紹介することのやうですので、かういふ構成になつたのでせう。

いづれにせよ、わたくしが今後新幹線に乗る時は、清掃チームの動きに注目することは間違ひないと申せませう。デハデハ。



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