源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
もう一人の乗客
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もう一人の乗客

草野唯雄【著】
光文社(光文社文庫)刊
1984(昭和59)年12月発行

生誕100年を迎へた草野唯雄氏。2008年に亡くなつてゐたさうですが、わたくしは訃報に気付きませんでした。
それもそのはず、遺族の意向で亡くなつた事の発表は控えられてゐたといふことです。人気作家だつたのに、気が付いたら亡くなつてゐたといふのは、ちよつと寂しいものですな。

傑作揃ひの草野作品の中でも、わたくしの好きなのが『もう一人の乗客』であります。
冒頭いきなり、ヒロインの由美が、死体を目の前にして茫然としてゐる衝撃的なシーンから始まります。しかし由美が殺害した訳ではなささうです。とにかくこの場所から離れなくては。現場にゐた痕跡を消し、土砂降りの中、タクシーを捕まえるのですが、やむを得ず見知らぬ男性と相乗りをするはめに。ところが、そのタクシーが事故を起こしてしまひ......

捜査の手が、由美に迫るのに時間はかかりませんでした。決定的な証拠が出た訳ではありませんが、状況証拠は最悪です。由美は現場にゐたことを隠してゐるため、辻褄を合はせやうと嘘を吐き、それを隠蔽するために新たな嘘を......といふ絶対的不利な状況であります。このままでは無実の罪を着せられてしまひます。
証人の一人として、タクシーに相乗りした男を探しますが、これが極めて難航します。つひには男の存在自体が疑はれ、由美には到頭逮捕状が請求されました。「もう一人の乗客」は、いつたい何処へ消えたのか......

ミステリイなので、ここで犯人を書くとつまらない。しかしその鮮やかなラストを、わたくしは紹介したくて仕方がないのであります。ゆゑ試しに読んでくださいませ。但し多分絶版と思はれます。天損ででも中ブルを購買すればよろしからう。
かかる面白い小説が絶版なのは残念ですが、電子書籍版が出てゐるやうです。ぢや、又。


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