源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
赤毛のアン
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赤毛のアン

L.M.モンゴメリ【著】
村岡花子【訳】
新潮社(新潮文庫)刊
2008(平成20)年2月発行

むさ苦しいおつさん(わたくしのこと)が電車やバスの中で、或は病院や銀行や床屋などの順番待ちの間に読んでゐる文庫本が『赤毛のアン』であるとは、周辺の人は夢にも思つてゐないでせうね。わたくしは一人でほくそ笑んでゐるのでした。
翻訳の村岡花子については、NHKでドラマにもなりましたので、記憶に新しいでせう。丸谷才一氏によると、かつての日銀総裁・一万田尚登氏は「花岡村子」と呼称してゐたとか。どうでもいいけど。

2008年、『赤毛のアン』(原題は「グリン・ゲイブルズのアン」)の出版100周年といふことで、新潮文庫では新装版が発行されました。文字を大きくして、ページ数を増やし、定価をハネ上げやうとの魂胆かと思つてゐました。
ところが、巻末に「改訂にあたって」なる文章があります。うん、「改訂」だと? これによると、村岡花子の翻訳にお孫さんが手を加へてゐるらしい。何といふ余計な事をしたのでせうか。どうせなら、完全新訳で出せば良かつたのに。購買前に知つてゐたら、古本屋で旧版を求めてゐたでせう。

まあいい。気を取り直して本書を読む。「緑の切妻屋根」(グリン・ゲイブルズ)に住む、マシュウとマリラのクスバート兄妹が、孤児院から男の子を養子に貰ふ予定でした。ところが、仲介人の手違ひにより、女の子が来てしまつたのです。それが物語の主人公となるアン・シャーリーでした。
マシュウは彼女が不憫で孤児院に戻すことなど思ひもよらず、マリラは彼女を孤児院に付き返すつもりでゐたのに、アンのおしやべりのペースに巻き込まれて、結局家に住まはせる事になります。
始めはしようがなしにアンを引き取つたマリラも、次第にアンを無くてはならない存在として認識するやうになりました......

アンはとにかくお喋りであります。そして常識外れに夢見がちな性格。マリラに言ひつけられた仕事も、妄想癖からすぐに忘れてしまひます。同じ失敗は繰り返さないけれど、常に新しい失敗をするので、マリラも目が離せない、しかしそれでも憎めない、陽性なアンに対しては本気で怒る事が出来ないのであります。
新たに親友(やたらと「腹心」と表現したがる)やライバルが登場しますが、皆が皆、アンのペースに巻き込まれるのが面白い。

上質なユウモワもあり、涙もありの、アンの成長物語。少女小説としては無論知らぬ人はゐない知名度を誇りますが、多分誰が読んでも面白い(つまらんかつたら、ごめん)。まあ、少なくとも夢見る女の子には読んでもらひたい一冊と申せませう。かかる物語が受け入れられるうちは、まだ希望の持てる時代かな、と。



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