源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ウルトラマン青春記
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ウルトラマン青春記 フジ隊員の929日

桜井浩子【著】
小学館刊
1994(平成6)年7月発行

先達ての「天声人語」にて、ウルトラシリーズの放送開始から50年といふ記事がありました。それまでのヒーローものと比して、単純な勧善懲悪(かういふのも好きですが)のみならず、どちらが善で、どちらが悪なのか分からなくなるやうなストーリーも少なからずある、と「ノンマルト」の例などを出してゐました。子供たちはかうして、複雑怪奇な「大人の社会」を学んでゆくのでした。ノンマルトは「ウルトラセブン」のエピソオドですが、まあそれはいいでせう。

1966年1月に「ウルトラQ」、同年7月に「ウルトラマン」の放送が開始されるやいなや、大きな話題を呼び、子供たちは提供会社の「タケダタケダタケダ~」といふ唄まで諳んじるほどの熱中ぶりでした。
その両シリーズにレギュラーとして出演してゐたのが、本書の著者である桜井浩子さんでした。
「Q」では、毎日新報のカメラマン・江戸川由利子として登場。主人公の自称SF作家・万城目淳の恋人役であります。
そして続く「マン」では、科学特捜隊の紅一点・フジアキコ隊員。江戸川由利子には萌えるのに、フジアキコは無機質な感じがするのは何故でせうか。わたくしの勝手な思ひ込みですかな。

桜井さんが初代ウルトラヒロインになるまでの経緯や、当時の撮影現場の裏側が綴られてゐます。元々フランス女優に憧れて東宝に入社した桜井さん。そんな彼女に円谷プロの仕事が舞い込んできました。まだ17歳だつたさうです。
撮影初日に遅刻したりとか、トラブルはあつたものの、スタッフや共演陣に助けられながら日々成長する姿を見せます。何よりも、自分の全てを捧げるがごときスタッフの努力を間近にし、自らも意識が変つていつたやうです。
恐らく、恋愛ものや文藝ものに出演したかつたでせうが、それが円谷の仕事をすることになり、当初は内心「なんだ、子供番組か」とがつかりしたのでは。
それが、特撮班を見学し、ウルトラマンや怪獣の着ぐるみ役者のプロ根性を見せつけられて、「主役はこの人たちだ」と確信するまでになります。

子供番組といつても、それを作るのは当然大人であります。子供相手だから、まあ適当に手を抜いて、簡単に済ませませうなんて人は一人もゐなかつた。
十代のヒロインの眼に映つた、熱気に満ちた当時の撮影事情が色々と明らかになるのであります。
放送後は、ウルトラから離れたい時期があり、円谷関係の仕事は全て断つてゐたさうですが、その後十年のブランクを経て、かうして過去を語るやうになつたと。現在では、青春の思ひ出そのものであるとまで述べてゐます。お陰で、わたくしどもは数々の秘話を知ることが出来たのであります。
なほ、本書の好評を受けて、その後ヒーロー関係の手記(黒部進氏、森次晃嗣氏、佐原健二氏、古谷敏氏等)が続続と発表されるやうになり、結果としてそれらの先駆けとなつた一冊と申せませう。



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