源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
汽車旅は地球の果てへ
51Bfdpj-BJL__SL500_SY344_BO1,204,203,200_

汽車旅は地球の果てへ

宮脇俊三【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1989(平成元)年11月発行

宮脇俊三氏の海外鉄道紀行シリーズも、ますます秘境度が高まつて参りました。タイトルも『汽車旅は地球の果てへ』と、大きく出ましたね。球体である地球に果てがあるのかどうか、わたくしには良く分かりませんが、まあ本書の雰囲気を端的に表現してゐると申せませう。

本書には6篇収録。まづは「アンデスの高山列車」。憧れのペルー中央鉄道のルポであります。高山過ぎて、並の日本人がイキナリ行くと、高山病にかかり危ないのですが、よりによつて宮脇氏は若い時に肺結核を患ひ、片肺状態なのださうです。肺活量は人並み以下で、階段を上るだけで息切れがする体質で、とてもペルーの高所に堪へられさうにないのですが、「死ぬ確率が三分の一ぐらいなら行きたいのですが」と医者に訴へ、強引に許可を得ます。医者も「行くなと言っても、聞き入れそうもない顔をしてらっしゃるし」と諦め顔。
幸い汽車旅では呼吸困難に陥ることはなく(ホテルでは酸素ボンベのお世話になりましたが)、列車内では演出で酸素吸入器を使用し、撮影させる余裕もありました。
普段は鉄道一辺倒で、観光にはまるで興味を示さぬ宮脇氏も、さすがにペルーでは「マチュピチュ」に興奮してゐます。いいなあ。

続いて「人喰鉄道・サバンナを行く」。人喰人種がゐる訳ではなく、アフリカのウガンダ鉄道の話であります。当地を植民地としてゐたイギリスが建設したのですが、その酷薄な労働条件により、多くの人命が失はれたさうです。極寒・猛暑はもとより、マラリアなどの伝染病、そして猛獣たちの襲来により絶命した労働者たちの多さから「人喰鉄道」と称されたやうです。
特筆すべきは、本稿の最後に、数ページに渡つて現地の写真が掲載されてゐることです。宮脇氏は自著に写真を入れる事を頑なに禁じてゐます。写真や図解を入れると、自分の文章の敗北だと感じてゐたやうです。実に珍しい例外であります。

他に、「フィヨルドの白夜行列車」「ジブラルタル海峡を渡る」「ナイル川の永遠」「オーストラリア大陸横断列車」と、中中日本人が気軽に乗れない鉄道に、編集部の力を借りて乗つてをります。かうして見ると、「地球の果てへ」といふフレイズも、あながち大袈裟ではありませんね。それぞれの旅が一冊の単行本として発表されてもいいくらゐの内容・密度であります。これらを一冊に纏めてしまふのは何だかもつたいないなあと感じるところです。
いづれにせよ、この時代の宮脇俊三は最強ですな。

デハデハ。機会が有れば又。



スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/628-a014e896
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック