源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
お気に召すまま
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お気に召すまま

ウィリアム・シェイクスピア【著】
福田恆存【訳】
新潮社(新潮文庫)刊
1981(昭和56)年7月発行

1616年4月23日は、沙翁が死去した日といふことになつてゐます。即ち今年で没後400年といふ節目なのであります。
仏文科に所属してゐながら、沙翁好きが高じて、大学の先生方には沙翁の話ばかりして不愉快な思ひをさせました。反省してをります。しかしそれほど沙翁は面白い。ここでは、人気の喜劇『お気に召すまま』の登場であります。

『お気に召すまま』といへば、男装の麗人、ロザリンド。このヒロインは、追放された元公爵の娘ですが、追放した本人はその父の実の弟、フレデリックなる悪い奴。フレデリックの実娘シーリアと共に生活してゐました。ロザリンドとシーリアは仲良し。
一方、ロザリンドと恋に落ちるオーランド―は、家長である長兄のオリヴァーから、亡父の正当なる遺産も与へられず、何かと冷遇されてゐます。それどころか、邪魔な存在だといふことて、スモウレスラーのチャンピオンと対戦させ、亡き者にしてしまはうと企むのです。この対戦、誰もがオーランド―の無残な敗戦を予想する中、勇敢にもチャンピオンに勝利するのであります。その際に、観戦してゐたロザリンドと相思相愛の一目惚れに陥るのでした......

その後主要な登場人物は、それぞれの事情から、「アーデンの森」へ集結します。ここで繰り広げられる、ロザリンドとオーランド―の恋愛模様。二人の会話は恥かしいのですがね。しかもオーランド―は、ロザリンドの男装に気付かず、彼女を男だと思ひ恋の相談なんぞをしてゐます。それほど恋い焦がれてゐる人のことを気付かぬとは、ちとをかしい。オーランド―は、本当は見破つてゐたのではとの説もある程であります。ま、最後は喜劇らしくハピイエンドに終るからいいけど。

ストオリイは他愛無いともいへますが、機智に富んだ台詞の数々に酔ひ痴れます。例へばロザリンドは、『空騒ぎ』のベアトリス、『ヴェニスの商人』のポーシャと並ぶ知性派ヒロインで、言葉遊びを愉しむ余裕があります。
そしてわたくしの一番好きな(『十二夜』の道化・フェステも良いが)道化・タッチストーン(試金石?)のイキイキとしてゐること! 逆境にもへこたれず、常に地口を忘れず、皮肉たつぷりの発言を連発して観客を喜ばせるのであります。

最近は流行り廃りのサイクルが短くなり、十年一昔どころか、三年一昔といつても良いくらゐの世相であります。しかるに、沙翁は400年の時を越えてもなほ、しかも海を隔てた遠い極東日本で未だに読まれてゐる。これは大変なことです。
作品で押しつけがましい主張をせず、ただ「人間といふものは、かういふものだよ」と、変らぬ人間の豊かさ、愚かさ、儚さ、愛らしさを提示する、その圧倒的な説得力が、観客及び読者に響いてくるからではないでせうかね。

では又、御機嫌好う。



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