源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
浅草博徒一代
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浅草博徒一代 アウトローが見た日本の闇

佐賀純一【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2004(平成16)年8月発行

本好きの人なら誰でもさうだと思ひますが、わたくしもこれまでは興味のある本はとりあへず購買し、しかし読書速度は購入頻度に追ひつかず、それでも買ひ控へをすることなく、勢ひそのまま積読となる書物が数多くあるのです。
しかも必ずしも購入した順番に読む訳ではありません。後から購入した本がより興味を引く内容ならば、先輩書籍を差し置いて先に繙くことになります。結果、積読本は増えこそすれ減ることは無く、中には最大で購入後38年経つても未読の本が我が家にはあるのでした。

この『浅草博徒一代』も、さすがに38年とは言ひませんが、購入後12年近くに達してゐました。このたび、やうやく読んでみて、激しく後悔したものです。もつと早く読むべきだつた!
いやあ、とにかく面白いの一言であります。しかし「面白かつた」だけで終ると、白痴的な感想文になるので、少しだけ蛇足を。

著者の佐賀純一氏は、本職は医者なんですが、作家活動も旺盛であります。どうやら聞き書き形式の作品が多いやうですね。さういへば本書も同様でした。
或る時、佐賀先生の診療所に、背中一面に刺青を入れた老人がやつてきました。佐賀さんはこの男に「ありきたりの言葉ではとうてい言い尽くすことのできない不思議な魅力」を感じ、診察と治療を引き受けたのであります。男の名前は伊地知栄治、1906年生まれ。
次第に二人は親しくなり、佐賀さんは伊地知の家に招かれるほどになりました。そこで話される伊地知の半生が、ひどく佐賀さんの興味を引き、結局かういふ一冊が誕生した訳です。

15歳の時に「お佳」なる女性に出会つたのが、アウトロー人生の始まりでした。以後やくざの世界に入り、裏街道を歩くことになります。バクチ打ちとして生きることになり、「出羽屋」の親分に預けられました......

当時のやくざは、暴力団とは違ひ、その資金源は専ら賭場の上がりでした。変な副業(?)などはしなかつたさうです。ゆゑに賭場の客を大切にし、映画やドラマみたいに、負けて身包み剥がされて裸で追ひ出されるなんてことはあり得ないとか。同様に、いかさま博奕なんかはとんでもない。
とにかく、地元の住人たちから悪い評判が出ないやうに、当時のやくざは腐心してゐたらしい。
大正から昭和戦後にかけての、ドサクサ時代。間違ひなく、ここにはもう一つの現代史があります。「正史」だけでは歴史は語れないなあと強く感じるのであります。

伊地知栄治の話は、聞けば聞くほどその先を知りたくなる痛快なものです。伊地知以外の登場人物もユニイクなキャラ揃ひ。あまりに面白いので、これは佐賀先生の創作ではないかしらんと疑念を抱くほど。
教訓としては、「気になつた本はさつさと読め!」ですね。
デハご無礼します。



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