源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
中国火車旅行
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中国火車旅行

宮脇俊三【著】
角川書店(角川文庫)刊
1991(平成3)年9月発行

宮脇俊三氏は鉄道のためなら、地球の裏側や北極の近くまでも喜喜として出かけて行きます。しかしながら、近隣国である中国は後回しになつたやうで、その原因は単純に鉄道に乗る機会がなかつたからださうです。即ち宮脇氏にとつては、ある土地に行つたことがある、とは「鉄道に乗つたことがある」と同義語なのでした。
何せ中国は広大であります。鉄道網も発達してゐて、その総延長は52000キロに及びます。宮脇氏は地図を眺めては、いつの日か乗りたいと、大事に取つておいた国なのでした。

そして遂にその日はやつてきました。しかも三年連続で中国の鉄道旅が実現するといふ、それまでの渇きを一気に潤さんとするかの快挙です。日本交通公社(現JTB)と角川書店のお陰で、編集者同行、ガイド付きの旅行となりましたが、それまで一人旅が基本だつた宮脇氏としては、若干窮屈な思ひもしたらしい。まあ、海外では何が有るか分からないし、結果的にはこれで良かつたのですが。
なほ念の為に添へると、中国語で汽車といふと、自動車を指します。日本語の汽車は、「火車」といひます。

初の中国行は1985年(第一章)、北京-広州間2313キロの乗車であります。写真家の山内氏が同行し、現地では桂さんといふ中国人ガイドが付き添ひます。行程の時間的余裕があり過ぎて、北京で近場まで汽車で往復したいと所望しますが、予約が必要なので、突然の乗車は無理だとガイドに断られます。本当だらうか。中国人は、外国人に対して見栄を張るので、庶民の乗る汚くて古い汽車に乗せたくないのでは。しかし現地では勝手な行動を取ると、後々面倒なことになるので、渋渋従ふ宮脇氏であります。せめて地下鉄に乗らうとして、「地下鉄は予約しなくても乗れるのでしょう」と皮肉を込めた発言をしますが、中国人ガイドには通じませんでした。

二度目は1986年(第二章)、上海-烏魯木斉(ウルムチ)間4079キロ。乗車時間は81時間(三泊四日)と、さすがに大陸鉄道で、スケールがでかいですな。ルートの後半は、まさにシルクロードをトレースいたします。角川書店の渡辺氏が同行。
宮脇氏も感心してゐましたが、中国の鉄道は日本ほどではないけれど案外時間に正確なのですね。貨物列車も多く、単線区間も長いので、ある程度正確に走らないと混乱をきたすのでせう。ところが、予期せぬ事態に巻き込まれ、17時間以上の遅れが発生したのであります。烏魯木斉から乗る飛行機に間に合ふのか?

そして三度目は1987年。大連-哈爾浜(ハルビン)間944キロ(第三章)と、成都-昆明間1100キロ(第四章)の2路線。同行するのは、『シベリア鉄道9400キロ』でもお馴染みの、角川書店の「ヒルさん」。全行程をガイドするのは、中国人女性の「鮑淳彦」さん。漢字だけ見ると、日本人の感覚では男性かと勘違ひしさうであります。この人、やる気があるのか無いのか分からぬところがありますが、最低限の仕事はしてくれます。
今回は10日もの旅程であります。2路線のみにしては長丁場ですが、ガイドの要請で必要以上に乗り継ぎに時間をとるかららしい。特に哈爾浜から成都への移動に二日もかけるので、全体にゆつたりとしてゐます。

行程があらかじめ決められてゐて自由度が少ないとか、外国人専用の上等な車両にしか乗れなかつたり、庶民用の美味しさうな弁当は食べさせてもらへないし、ホテルではVIP扱ひされたり、気軽にふらりと汽車に乗れなかつたり、写真を撮れない区間があつたり、ビールは冷えてなくて温いし(現在の中国は冷えたビールがあります)と、何かと日本とは勝手が違ふのですが、我が宮脇氏は悠々と全てを受け入れます。
やはりこの国に来ると、日本でせかせかしてゐたことを忘れ、すべてがどうでも良くなる傾向があります。現在は経済成長とともに、昔よりも忙しなくなつた印象ですが。それが良いことか、悪いことか、わたくしには分かりませんなあ。



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