源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
翻訳英文法
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翻訳英文法 訳し方のルール

安西徹雄【著】
バベルプレス刊
1982(昭和57)年4月発行
2008(平成20)年9月新装版発行

所謂英文法の本は、それこそ星の数ほど出てゐますが、翻訳を志す人の為に書かれた文法書は、わたくしの知る限り本書が本邦初であります。
英語が得意な人なら翻訳が出来るかといふと、それは大間違ひ。翻訳は英文解釈の延長線上にはなく、新たな日本語文章を構築する力が必要であります。しかし、具体的にどうすればいいの? といふ疑問に応へたのが、この『翻訳英文法』でございます。

名詞・代名詞・形容詞・副詞・動詞......と品詞別に、豊富な例文と「安西試訳」を駆使して分かりやすく解説します。演習では安西氏が直接関つた「バベル翻訳学院」の受講生の翻訳を添削する方式で展開。受講生が原文を理解しきれず苦し紛れに書いた訳文を読むと、まるで自分の事のやうに思へて恥かしくなります。

また、共通テキストとして、江川泰一郎氏の『英文法解説』(金子書房)を採用し、この本から多くの例文を引用してをります。わたくしも高校時代、この黄色い表紙の「江川の英文法」にはお世話になつたものであります。無味乾燥な凡百の英文法書と一線を画してゐてお気に入りの一冊でしたが、翻訳のプロも認めてゐたと知り、嬉しくなつた次第。

訳し方のテクニークは様様ありますが、原則中の原則が序章の冒頭に述べられてゐます。即ち「原文の思考の流れを乱すな」といふことであります。
周知のやうに、英語の構文はSVOが基本。主語の直後に動詞が配置されてゐますので、文意の重要順に並んでゐると申せませう。しかるに日本語では結論となるべき動詞が最後なので、文意を完全に理解するまでのストレスがあります。ただ単にヨコのものをタテにすれば良いといふものではありますまい(最近はヨコ書きの日本語も一般的ですが)。

また、代名詞は極力訳さない(必要があれば固有名詞を繰り返した方がいい)とか、複雑な構文は一度再構築して訳してみるとか、英語の品詞通りに日本語にする必要が無い(原文が形容詞でも、日本語では形容詞を充てない方が良い場合もある)とか、学校英語しか触れてない人には参考になるであらう考へ方が惜しげもなく開陳されてゐます。
いはばプロの翻訳家の手の内を明かす側面もあり、同業者から苦情が出ないか心配になるほどであります。

そして最終章で、「何よりも大切なこと、三つ」と称して「英語を知ること」「日本語を習うこと」「翻訳という仕事を愛すること」を挙げてゐます。これを読むと、軽い気持ちで(デモシカで)翻訳でもやつてみるかなと思つてゐる人には耳が痛いでせう。
あへてエラソーに言へば、「誠実さ」が欠かせない徳だと個人的には思ひます。今をときめく舛添要一氏も数冊の訳書を世に問ふてゐますが、過去の翻訳をめぐる不誠実な対応がニュースになつてをりました。似たやうな事例は、例へば大学の教授と教へ子の関係でしばしば起きてゐると仄聞してゐます。自分に手の負へない仕事は断る勇気も必要ですね。

オヤ話がそれてしまひました。申し訳ない。ちよつと疲弊してゐるやうですので、休息いたします。デハデハ。



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