源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ミッドナイト
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ミッドナイト<全4巻>

手塚治虫【著】
秋田書店(秋田文庫)刊
1998(平成10)年2月発行(第1巻)

8月5日のタクシーの日に合せて『ミッドナイト』を登場させやうとしたのですが、既に4日も過ぎてゐましたね。相変らずにすいわたくしであります。

ミッドナイトは、その名の通り深夜専門のタクシー運転手。本名は三戸真也で、これまた深夜にかけてゐるのでせうか。
夜の帳がおりる頃現れ、夜明けとともに去つてゆく。タクシー会社に属さず、個人タクシーでもない、無認可の営業、即ちモグリのタクシーなのであります。
元は暴走族でしたが、恋人のマリが交通事故により脳死状態となつてしまひ、その治療費を稼ぐためにタクシー運転手に転身したといふ経歴。そのせいかぶつきらばうで、ガサツな性格、口は悪く近距離の乗客をゴミ呼ばはり、乗車拒否は当り前なのです。
何だ、いいとこ無いぢやん、こんな主人公で感情移入出来るの?と思ふかも知れませんが、根は善人なのです。といふか、底抜けのお人よしであります。そして、何よりも「命」を大切にする青年。

一話読み切り形式ですが、毎回冒頭に「夜はいろいろな 顔をもっている その顔を ひとつひとつ のぞいていく男がいる その名を ミッドナイト」といふ文章が入ります。ドラマでいふと、ナレーションですかな。
その夜の顔をのぞくミッドナイトは、ワケアリの客を乗せ、その身の上を知るが最後、知らんぷり出来ぬのであります。そのせいで危険な目に遭つたり、大変なとばつちりを被ることもしばしばなのです。
やりきれぬ最後になることもあれば、心温まる結末に気持ちよく夜明けとともに去ることも。

実は手塚治虫作品はどちらかといふと苦手な方なのですが(どうも神格化されるやうな人は敬遠したいタチです)、『ブラック・ジャックBJ)』は昔から好きで、BJ好きなら必ず気に入ると言はれて読んだのですが、全くその通りでした。さういへばBJ本人もこの漫画に何回か登場します。初登場時の、このふたりのやり取りが面白い。

ミッドナイト「金でなんでもやってくれる先生ってあんたですか」
ブラック・ジャック「金さえ積みゃなんでもなおしてくれると思い込んでるバカはお前さんかい」

まるでBJ外伝版みたいな雰囲気さへ漂ふのであります。

そして衝撃の最終回。あまりにショッキングな展開の為、「チャンピオン」連載時や、最初の単行本(チャンピオンコミックス版)では掲載が見送られたさうです。勿論ここで取り上げる秋田文庫版では収録されてゐます。ここでもBJが大活躍しますが、なるほどこれでは賛否両論といふか、当時としては否の意見が多くなつたのではないかと推察されます。まあ、今となつては、これもありかなとは思ひますが、リアルタイムで読んでゐた読者にとつては、やはりイムパクトが強すぎると申せませう。

数多くの有名作品を有する手塚治虫氏にとつては、小品に属するかも知れませんが、もし古本屋ででも見かけたら、読んでやつてくださいな。ではまた。



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