源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
警察庁長官を撃った男
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警察庁長官を撃った男

鹿島圭介【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2012(平成24)年7月発行

1995(平成7)年は、或る古老をして「戦後最悪の年だつた」と言はしめたほど、厄災の大きな年でありました。
その代表例が、1月17日の阪神淡路大震災、3月20日の地下鉄サリン事件と申せませう。前者は自然災害(人災とも批判された)であるのに対し、後者はカルト宗教団体(オウム真理教)による凶悪犯罪でした。そして同じく3月の30日に発生したのが、國松孝次・警察庁長官狙撃事件であります。

折からオウムに対する捜査が進んでゐた時期でもあり、公安部長は「オウム真理教の信者グループが教祖の意思のもと、組織的、計画的に敢行したテロ」として断定し、結局それで捜査は終結しました。世間も何となく、ああやつぱりオウムだつたのねと、わたくしも含めてさう認識した人が多かつたと記憶してをります。それにしては実行犯が特定されず、不思議な幕切れではありました。

ところがどつこい、鹿島圭介著『警察庁長官を撃った男』を通読いたしますと、中村某なる老人が「犯人は自分だ」と名乗り出てゐたといふのです(元元、この人物を取り上げたのは「週刊新潮」のスクウプださうですが)。しかも詳細な自供内容で、犯行現場にゐた人物にしか分からぬ事実を次々と述べてゆくのです。さらに使用した銃についても、日本はもとより本場米国でも稀少な銃で、科捜研や科警研のメムバアも知らぬ知識を有してゐました。
著者はウラを取るべく精力的に取材を試みます。銃器類に関しては、態々米国まで飛んで関係者の証言を求める旅をするのでした。

そもそもこの事件は、本来捜査に当るべき刑事部がオウム捜査で手一杯の為、公安部にお鉢が回つてきたといふ事情がありました。これが悲劇の原因で、オウムの事しか頭にない公安トップは「中村説」を相手にせず、事実を捩ぢ曲げてまでオウム犯人説を「創作」したといふ事です。
自らの保身と面子の為に、みすみす真犯人を逃し、迷宮入りにしてしまつた罪は大きい。俄かには信じ難いのですが、近年の警察組織の不祥事の数々を振り返ると、信憑性は高いのではないでせうか。事実は小説よりも奇ッ怪なり。まあ一度本書に目を通してくださいと申し上げます。著者の、事実を求める執念に圧倒される事でせう。



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