源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ザ・ベストテン
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ザ・ベストテン

山田修爾【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2012(平成24)年1月発行

現在はテレビが複数台ある家庭が多いと存じますが、かつては一家に一台、家族の団欒の場所に鎮座してゐました。兄弟姉妹の多い時代で、チャンネル争ひも熾烈を極めてゐたと言ひます(我が家では、さういふことは無かつたが)。個人的な感覚では1970年代の10年間がその時代ではないかと。
当然、家族の皆が同じ番組を視聴してゐた訳で、興味の有無に関係なく、共通の話題となり得たのでした。
日本中の庶民がそんな感じだから、子供たちは翌日学校で、例へば昨夜放送されたドリフの番組の話題で盛り上がることができたのであります。

また当時は、「歌番組」も全盛時代でして、各局が競つて流行歌手を登場させてゐました。人気歌手は多忙を極め、バラエティ番組なんかでも、必ず歌手が持ち歌を披露するコオナアがありました。さういへば、当時は繁華街を歩いてゐても、どこかしらからヒット曲が流れてきたものです。ゆゑに、自分の好みの曲でなくても、贔屓の歌手の唄でなくても、ヒット曲は皆が認識してゐました。ウチの父なんぞは、自分の嫌ひな歌手の唄が流れてくると、「何でこんなくだらん歌が流行るんだ」と苦虫顔で毒づく一方、その歌を平気で口ずさむのでした。

「ザ・ベストテン」は、さういふ時代が最後の輝きを見せてゐた時期に始まつた歌番組であります。前例のない「ランキング形式」を採用したことや、司会に黒柳徹子さんと久米宏さんを起用したことなどが功を奏して、大人気番組となりました。
やらせのないランキングを、といふことを重視したため、たとへ山口百恵さんでも11位なら出演できず、逆にテレビ出演拒否が分かつてゐる歌手でも、ランキングにあげた上で「欠席」としてゐました。そのたび久米宏さんが律儀に視聴者に謝罪してゐたのが印象的です。

本書『ザ・ベストテン』の著者・山田修爾氏は、この番組の誕生から終了まで一部始終に関つたディレクター、プロデューサーといふことです。誕生時の苦しみ、ベテランと若手の確執、生番組ならでは事故の数々、スタア歌手との意外な交流など、本人でなければ書けない裏話が満載であります。著者と黒柳徹子さんとの特別対談も収録。さらに巻末には、全603回分の「ベストテンランキング一覧」が。これを見ると、わたくしの場合、70年代まではほとんどの曲を知つてゐるのに対し、80年代以降は、自分の贔屓歌手以外の曲はほとんど知らない。このあたりから核家族化とか、テレビは一人に一台の時代とかに突入するのでせうかね。
「ザ・ベストテン」をリアルタイムで観てゐた人にとつては、丸ごと楽しめる一冊ではないでせうか。



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