源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
サウスバウンド
無題

サウスバウンド

奥田英朗【著】
講談社(講談社文庫)刊
2014(平成26)年10月発行

映画版に村井美樹さんが南先生役で出演してゐましたので、原作を読んでみました。わたくしは上下分冊の角川文庫版を購買しましたが、実はその後、合本が講談社文庫から出てゐましたね。ここではこちらを挙げておきます。

主人公は上原一郎なる元過激派。東京で妻と三人の子供と暮らしてゐながら、いまだに活動家時代と同じ思想を持つてゐます、国家といふものを認めず、税金は払はず社会保険には加入せず、子供には学校なんか行くなと言ひ放ち、アジ行為を繰り返す人であります。困つた人。
長男の二郎はそんな父親に迷惑を被つてゐます。本編はこの二郎君の視点で進みます。不良中学生の「カツ」に恐喝されながら勇敢にも戦ふ一面を持ち、成長を見せるのでした。父と同じ仲間のアキラおじさんも存在感を見せます。映画では出てこなかつたなあ。

そして父は国家に頼らない自給自足の生活を求めて、一家で沖縄・西表島に移住してしまひます。そこには公営住宅もあるのに、わざわざ電気も水道もないあばら家で生活を始めるのです。実はその家は本土の資本が入つてゐて、開発予定の土地でした。上原家は不法占拠してゐたといふ訳。退去に応じぬ父。当然いざこざが発生し、果てはテレビにて強制撤去と最後まで抗ふ父の姿が全国に曝され......
そして最後に父と母が選択した生き方とは......? 結局この上原一郎さんは、家庭を築いてはならぬ人でしたね。

どうも映画を先に観たせいか、上原一郎が行動する度に、わたくしの脳内ではトヨエツが喚いたり暴れたりするので困りました。ただし原作では「ナンセンス」とは言ひません。官憲と戦ふ姿は痛快とも言へますが、単なる我儘なおつさんとも申せませう。小説としてはまことに読み易く、むしろ軽い印象です。骨太の小説を好む人には物足らぬかも知れません。しかし「結局、何を言ひたいの?」などと問ふては不可ません。上原一郎といふ人物のキャラクタアでぐいぐい押していく作品なので、この人物が合はない人にはつらい一作かもね。
ぢやあ、又。



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