源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
漱石を売る
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漱石を売る

出久根達郎【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1995(平成7)年9月発行

漱石イヤー(没後100周年)の最後に、『漱石を売る』の登場です。といつても、漱石の小説作品についての話ではなく、書簡の話。

著者はご存知のやうに、古本屋「芳雅堂」のあるじであります(当時)。苦心の末、大好きな漱石の書簡を二通手に入れたさうです。その真贋については問題ないやうですが、問題はその中身だとか。一通は礼状であり、特段の問題はない。しかし今一通は、何とお悔やみ状なのでした。
いくら大文豪の真筆といへど、弔辞となると別で、縁起を担ぐため中中買ひ手がつかぬ。実際、色色と販促活動をしますが、うまくいきません。よし長期戦だと構へたそんな折、意外なところから買ひたいとの声がかかりました。ところがその買ひ手の思惑といふのが......

漱石専門の古本屋が夢だつたといふ著者の、初期に属する作品集。丁度直木賞を受賞して、注目度が俄然上がり始めた頃でせうか。本好きなら一度くらゐは夢想するであらう古本屋の内幕も適度に披露しながら、表題作ほか約50篇の作品が収録されてゐます。
当店を待ち合せに利用してゐたアベックが実は兄妹だつたとか、開店以来通算15万冊販売記念イベントの泣き笑ひ、老夫婦が亡き息子の足跡を辿る旅に出て著者の店を訪問した話、あるいはゴミ問題で現代人を嘆き、チラシの裏で時代の変化を感ずる。かういふ感覚、例へば平成生れの人にはどう響くのでせうか。全く響かぬのか。興味のあるところであります。

本好きならば多分喰ひつく内容の、滋味溢れる文章であります。まあ、特に本書でなくてもいいけど、こんな寒い季節には出久根氏の文章は良く似合ふのです。
デハまた。



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