源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
田園の憂鬱
田園の憂鬱 (新潮文庫)田園の憂鬱 (新潮文庫)
(1951/08)
佐藤 春夫

商品詳細を見る

田園の憂鬱
佐藤春夫【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1951(昭和26)年8月発行
1996(平成8)年8月改版


いやはや、まことに憂鬱であります。
作者自身がモデルと思はれる主人公が、都会から逃れるやうに郊外へ出て来た訳ですが、とにかく鬱々としてゐます。
随行した女性は女房のやうですが、正式な夫婦ではなささうです。彼女も幸薄さうだ。
イヌも連れて来てゐます。フラテとレオの二匹。近所に何かと迷惑をかけてゐますが、飼ひ主たちにあまり反省の色は見られません。それどころかまるで自分たちが被害者のやうな物言ひであります。

「彼」は心の病を患つてゐます。しかしこの環境では事態は好転しさうにありませんな。はたせるかな幻聴幻覚症状がひどくなるのであります。
そして後半に繰返される「おお、薔薇、汝病めり!」のフレイズ。彼自身が発してゐるのに、まるでどこか別の場所から聴こえてくるやうな感覚。
そして、あたかもTVドラマが後半になるとCMが挿入される頻度が高くなるやうに「おお、薔薇、汝病めり!」を連発します。薔薇は「そうび」と読ませるのであります。

...文学史的に見れば「記念碑的名作」となるのでせうが、今読むとその藝術至上姿勢が苦しい。もつと言ふと、笑ひを誘はれるほどであります。
坪内逍遥の小説の会話を、現在の我我が読むと大爆笑であります。無論坪内逍遥は読者を笑はせやうとして書いた訳ではありません。
『田園の憂鬱』もそれに近い存在になつてゐるのではないかと感じました。現役選手から古典の棚に収められる作品といふか。

まあ、それも良いでせう。

スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/69-b8b75fea
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック