源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
銀の匙
銀の匙 (角川文庫)銀の匙 (角川文庫)
(1988/05)
中 勘助

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銀の匙
中勘助【著】
角川書店(角川文庫)刊
1989(平成元)年5月発行


主人公である「私」の幼少期を綴つた物語。まづタイトルが好いですな。銀の匙。
今の日本人は匙なんて言葉をあまり駆使しないやうです。いつぞや、中国の友人たちと食事をしてゐた時に「シャオズ(勺子)を日本語で何と言ひますか」と問はれたことがあります。
「本来は『さじ(匙)』だが、今の日本人はほとんど『スプーン』と言ふよ」と答へたら、「匙の方が簡単で耳に快い。なぜ日本人は英語を使ふのですか」と不満気に返されたものであります。さもありなむ。

淡淡とした語り口ながら、引き込まれる世界。主要人物として伯母さん、お国さん、お蕙ちゃんが登場します。お蕙ちゃんは少し性格悪いか。
中でも伯母さんが彼に与へた影響は少なくないでせう。のちに再会する場面がありますが、鈍感なわたくしも感情を揺さぶられる描写でした。
伯母さんと「私」の関係を、漱石と清のそれになぞらへる人もゐますが、わたくしはなぜか、バンツマ演じる無法松と「ぼん」を連想しました。走馬灯。



ところで、千石規子さんも逝つてしまひましたね。古い映画人がまた一人。
千石さんといへば、黒澤映画を語り出す人が多いかもしれません。
しかるにわたくしが考へる、千石さんを象徴する演技は、本多猪四郎監督『怪獣大戦争』に於ける下宿のをばさん役でした。
発明に明け暮れる久保明が、痴漢撃退器「レデーガード」の効果を下宿で試験してゐます。大音量が売りの製品なので、うるさいのです。赤ん坊を背負つた千石規子が、赤ん坊が夜寝なくなるからやめろと怒鳴る。「すいませーん」と久保。再び久保明を怒鳴る千石。「今(レデーガードは)鳴らしてはゐませんよ!」と抗議すると、千石をばさん「電話ですよ!」
久保明は独り言。「ちえつ、をばさんの声の方がよつぽどけたたましいや」...最高なのです。

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