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ケナリも花、サクラも花

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ケナリも花、サクラも花

鷺沢萠【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1997(平成9)年3月発行


今年は鷺沢萠さん生誕50年であります。35歳で自ら命を絶つた時はまことに驚いたものです。未だに「本当に自殺だつたのか」といふ声がきかれますが、わたくしにとつて、それは最早どうでもいい問題であります。いづれにしても、もう彼女はゐない訳ですから。
正直のところ、彼女の小説はわたくし好みのものと、さうではないものと明確に別れます。で、書棚を見て何を選ばうかと思つてゐたら、この『ケナリも花、サクラも花』が目に入つたので、これに決定。

本書は小説ではなく、彼女の韓国留学記であります。周知の如く、鷺沢さんは日本人と韓国人のクォーター(父親が日韓ハアフ)。しかしその事実を彼女が知つたのは成人後で、母親も夫がハアフだつた事を知らなかつたさうです。
で、何故韓国語を学ぶために留学したのでせうか。しかも自身は既に作家として名を成してゐるのに。
解説の柳美里さんによると、「韓国の血が入った家族の中で誰ひとり韓国語を読めも話せもしないというのはやはり寂しいことのような気がするので」と答へたといふ。

柳美里さんは、自分探しには興味が無いと言ひます。どちらかといふと、わたくしは柳美里さんの意見に同意するものであります。今まで公にしなかつたけれど、何しろわたくし自身日韓ハアフであり、中学生になつた時点で父親が告げました。父はわたくしの反応を気にしてゐましたが、自身は「ふうん、さうなんだ」程度の感想でした。

しかし人は様様。鷺沢萠さんは四分の一自分に流れてゐる韓国の血を無視できなかつたやうです。
気分が悪くなつたり、泣きさうになつたり、心の中で毒づいたり、繊細な鷺沢さんにはショックだつたことも多かつたと存じます。麻雀の本で見る鷺沢さんとはまるで違ふ印象ですが、こちらが本性なのでせう。
かなり重い内容も含まれてゐますが、若手作家による韓国訪問紀としても傑作ですね。返す返すも、その夭折が悔やまれるのであります。

デハデハ、今夜はご無礼します。



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